おめでとう!オーストラリア

そしてもうひとりの勝者

大きく両脇に開いた銀傘の端から無数に備え付けられた花火がバチバチという大きな音とともに濃紺に染まった夜空に向けて一斉に噴出した。異常に明るい照明に照らされた天然芝のグランドの中央には,Cathay pacific HSBC Hong Kong Sevens のアーチの下で34年ぶりのカップ優勝の歓喜に沸くオーストラリアセブンスのメンバー拳を高らかと突き上げて何度も何度も勝鬨をあげている。おめでとうオーストラリア2点差を追いかけて必死にゴールを目指していた終了間際、ゴール左隅にフィジーの二人のディフェンダーを引き連れて飛び込んだ。レフェリーも興奮した様子で、且つ冷静にアシスタントレフリーに状況を確認したあとで両手を空中で大きく四角くかたどった。サウススタンドのオーロラビジョンにTMOの表示のあとプレイが再生される。一度目の再生で文句なしのトライの様子が映し出されるとスタンドが大きな歓声で揺れた。それでもレフリーは耳のインカムに手をあててもう一度、TMOの再生を要求した。ノックオンなし、タッチラインにも飛び込んだ選手の足はかかっていない。一息ついてからレフリーの右手が大きくあがってホイッスルが高々と響いた。見事な逆転トライだ。試合終了まで残り30秒ほどだ。。オーストラリアはゆっくりとゆっくりとコンバージョンキックの体制を整えながら試合終了のホーンを待っている。フィジーはその様子を特に急かせることなくじっと待っていた。中にはグランドに膝をついて項垂れているプレイヤーもいた。ホーンと同時にConversion Unsuccessful、この瞬間オーストラリアの34年ぶりのカップ優勝が決まって、フィジーの香港セブンスのカップ6連覇の夢が途絶えた。
歓声がのこるメインスタンドから花火が消えた夜空を見上げた。周りの歓声が耳に入ってこない静寂を感じた。よかった、本当によかった確かに今香港セブンスが戻ってきた。おめでとうオーストラリア心からの祝意を表したい。そしてもうひとりの勝者は2019年から3年半もの苦境に打ち勝ってHong Kong Sevensを見事に成功させた「香港」そのものだろう。僕はそう思っている。

ハイライトはこちら → HK Sevens

歴代の優勝国 → 香港セブンズ情報

 

vs Police RFC

試練か、無情なるノックオン

相手陣地に攻め込んだ5mのラック、前のラックからの移動で少し遅れてシェイプに加わったときラックに絡まれたSHの代わりにボールを出そうするあつおと目があった。鋭いボールが目の前に飛んできた。先制のトライを決めたあと逆転のトライ2本を許した後の反撃の大チャンス。対戦相手の Polics RFC は文字通り香港警察が母体のチームだ。過去に試合の経験もあるチームだ。「硬くて痛い」そんな印象のチームだ。グランドについて時にみた彼らの浅黒い筋肉質の身体から「厳しい試合になるな」という印象は持っていた。トライ2本を決めて試合の流れが相手に大きく傾きかけた前半終了前の15分、伸ばした手にパチンとが当たると後ろに小さく弾けた落ちた。振り向くと後方にいた仲間がすぐさまセービングでボールを確保してくれたのだが無情にもレフリーのホイッスルがなる。「Knock on」、若い仲間から厳しい言葉飛ぶ、二度目だ。当然だ、グランドに立てば先輩後輩、年齢などは関係ない。目の前の相手と勝つか負けるかの真剣勝負の場所にいるのだ。しかも逆転を目指して盛り上がっていたチームの気運を一気に削ぎ落すゴール目前のノックオンだ。心が折れる。貢献するどころかまたチームに迷惑をかけてしまった。潮時かな、試合中にも関わらずそんなことが頭をよぎった。自分が思っているプレイと実際のそれとのギャップが少しづつ広がってきていることを感じている。日常生活ではさほど感じていないギャップがテンションが張りつめた試合では顕著に現れるのだろうか?スクラムを組みながらふと空を見た。抜けるような真っ青な空が広がっていた。目線を間近にいる対面の相手に向ける。褐色の脂肪の薄い頬の皮膚が突っ張っている。レフリーの「セッ」の合図で肩が入れる。ガツンと衝撃を感じる。「硬い、肩がめちゃ硬い」 一瞬の間を置いて頭をあげてスクラムアウトしたボールを探す。後方で仲間が相手と激しくもみ合っているのが見えた。オフサイドラインまで下がる身体が妙に重く感じた。
35分ハーフを戦い終えて41-15で敗れた。試合直後の円陣でキャプテンが言った。「勝てたな」、勝てる相手だったという意味だ。チームの勢いを止めてしまった自分のノックオンを棚に上げて納得していた。チームの力は確実に上がっている。強くなっている。確かにそう思う。皮肉なものだ。強くなればなるほど悩みはは深くなる。

vs HKU Sandybay

ももが泣いた

25分もの間、ずっと自陣のゴール前でのディフェンスを強いられ続けていた。U16Gの試合は今シーズン、変則的に10人制の25分間の一本勝負のリーグ戦だ。試合開始直後から始まった攻防の中、何度もボールをターンオーバーしてはキックで陣地を挽回し続けていた。全員が体を張って相手を止める。その繰り返しだ。Sandybayは先週の試合でHKFCに負けている。闘志を漲らせてゴールに迫ってくる。何度目のキックだったろうか?少し高く上がってしまって距離が出なかったボールを背走してはしる相手のウィングがダイレクトキャッチした。そしてそのまま反転して対角線方向のコーナーへ向かって走り出した。ディフェンスのほとんどが反対側のコーナーに取り残されたままだ。ボールを持った相手のウィングと一直線に真横に走るディフェンダーとのゴールまでの競争になった。すでにロスタイムに入っていることは分かっていた。届かなかった。HKFCは最後の最後で力尽きた。レフリーが右手をあげてトライのホイッスル、コンバージョンはUnsuccessful、0-5で敗れた。

HKU SandybayはHKFCの宿敵だ。U16Gの年代はコロナ禍にあってクラブチームが減ったこともあって合同チームが再編されている。Valley、DB Pirate、それにKukriの合同チーム、もうひとつは、StingrayにTigersの合同チームだ。HKFCとSandybayだけが単独で構成されたチームなのだ。この変則4チームで2022-2023シーズンを戦っている。単独チーム同士という事もあって相手には負けたくないとうチーム同士のプライドの張り合いなのだ。先週の試合はHKFCがトライ数で4-0で勝利していた。

厳しい顔で全員がベンチのほうに戻ってきた。チーム全員の顔に悔しさが滲んでいた。後ろのほうにももが居た。遠目からでも涙目になっているのが見えた。「負けたのが悔しかったんだな」ベンチからみていてそう思った。コーチの周りで円陣を組んで長いミーティングのあとももがそばに来た。近づくにつれて泣きじゃくっていた。少し様子が変だなと思っていると「届かなかってん、タックル行けたのに、届かなかってん」泣きじゃくりながらそう言っていた。すぐに分かった。最後に一直線に追いかけたのはももだったんだ。タックルが間に合わなかったんだ。「行けてん」そう言ってずっと泣きじゃくっていた。するとそれに気づいたチームメイトのシエラが傍にきて一生懸命に「もものせいじゃないよ、もものせいじゃない」と背中をさすりながら声をかけてくれた。「うん、うん」とうなづいて聞いていた。
試合の後、ももが泣いたのは今回で3度目だ。一度目はラックからボールを持ち込んでヘルドアップ(パイルアップ)されてトライ出来なかった時、2回目は2020年1月1日のHAppy New Year Gameで敗れた時だ。悔しくて泣く、いい経験になったいることだろう。次に活かしてほしいと思う。

Congratulations to Gai Wu Blossoms

シーズン初勝利、それでも自己評価は30点!

vs ORIGIN City RC Quakes とのシーズン第2戦、26-10で勝利した。勝負に勝つのは嬉しいもんだ。今までの嫌なことや辛かったことを一気に吹き飛ばしてくれる。チームみんなの笑顔が光っている。「勝てる」、ラインで送られていたチームの参加メンバーを見て思っていた。10年以上Gai Wuで経験していると何か根拠はあるわけではないが「勝てるな」と試合前から分かったりするのだ。そんな意味のない自慢は置いといて、「ラグビーはやっぱりディフェンスだなぁ」と改めて思った試合だった。ビデオを見返してもしっかりと前にでて止めていることがよくわかる。単純にいうとディフェンスの出来が悪いと(ディフェンスを破られると)負けるんだよな。逆にいうと相手のディフェンスをどうやって破るかの戦いなんだな。キックで破るのか、フォワードの縦の突破か、バックスの横展開で破るのか等を組み合わせて戦っていくんだよな。

という訳で試合ビデオはこちらからどうぞ

それでは、自分のパフォーマンスに対する自己評価です。先々週のシーズン初戦と比べてみて自分の出来は、ドロロロロロロ(ドラムロールの音)「30点」当然、100点満点での30点です。まず、自分的によかったところは「スクラム」しっかり組めていた。押されていなかったと思う。自分への努力目標として低く組む、相手が押してきたら姿勢をさらに低くして相手に押させないことに取り組んでいる。今回のスクラムではそれが出来ていたと思う。ダメダメポイントとしては、「走ってない」前回の試合よりは走ることを意識して臨んだのだけれど(試合中はけっこう走っているつもりでいたんだけどね)ビデオを見る限り「全然走っていなかった。ただ前回よりはラックやモールといったポイントには少しだけど絡んでいたな。途中、若いメンバーからラックで「ハルキさん寝てる、起きて」って言われた (><) まぁそれでも楽しかったです。今回の試合は勝ったせいもあるんだろうけど、本当に心から楽しかったんです。また、やりたいと思ったんです。

追記)それからもうひとつ、ちょっと気づいたことがあるんです。走っているときに歩幅を敢えて広くして走るとバランスを崩しそうになるんです。歳とったなと実感するのは自分の歩幅が若い時に比べて短くなっているんじゃないかということ。うすうすは気づいてはいたんですが、えっ!っと再認識したときはちょっとショックでした。それからというもの意識して歩幅を広くして歩いたり走ったり試してみる。すると情けなやバランスを崩しそうになるです。単に軽く走っているだけでですよ。歩いているときはそうでもないんですが、若いときみたく歩幅を広くして飛ぶように走ろうとすると両腕の振りと交互に出す足のリズムが合わなくなっているんです。それを昨日、間違いないとしっかりと自覚したときは結構なショックだったんです。試合直前だというのにです。しっかりとリハビリして早く走れるようになります。「還暦が走っているから僕達もっと走らなきゃ」と言わせたいんですよ 🙂

試合結果などHKRUのページはこちら

 

Weekday training at Happy Valley,

土曜日の試合に備えて

先週に続いて昨夜も Gai Wu Hong Kong の練習に参加してきた。10月の下旬になると夜は20度をきってて気持ちいい。Gai Wu HKのメンバーは若くて元気がいい。ラグビー経験者で構成されるBlazeと初心者も含んだ経験の浅いメンバーで構成されたFlamのふたつのチームがある。毎週、火曜日と木曜日に女子チームも一緒にピッチをシェアして練習を続けている。コロナの前はBlossoms(日本人チーム)のメンバーも、わたしも含めて頻繁に参加していたのでだけれど公共施設の使用に規制がかかってからはすっかりご無沙汰していたのでした。
んで、シーズン開幕戦での不甲斐ない自分を奮い立たせるために先週に続いて昨日も参加してきました。初心者もいるFlamの練習は実戦でも当たりを想定したBlazeのそれとは違ってスピード的にも当たる強さなど私にとってはある意味ちょうどいいレベルだ。練習中も気軽に自己紹介して握手を求めてくる若い子もいる。こうして20や30も歳の離れた連中と一緒に汗をかく機会はなかなかないなと思いながら・・・最後にBlazeとのガチンコのAD、さすがにスピードと強さが違うことを実感する。痛いし怖いけど嬉しいし楽しい。これがラグビーかな 🙂 1時間半の練習が終わってみんな笑顔で「See you next week」と声をかけてくれる。清々しい気持ちでピッチを後にした。いい練習だった。

Gai Wu Hong Kong Weekday training.

次の試合に向けて

昨日、久しぶりにGai Wu HKのWeekday trainingに参加してきた。8時から9時半までの1時間半、楽しく汗をかいてきた。10月に入ってから香港の夜は過ごしやすくなってきた。昼間の気温も28~29度どまりで30度を越すことが少なくなったように思う。グランドについて遠くからみても男子女子合わせて5~60人以上が集まっているのが分かる。集団に近づいて行って若いメンバーに「Hello、Hello」と声をかけると「Hello」と返してくれる。間違いなく20代だ。顔見知りのメンバーを多くいる。昨シーズン同じように何度かタッチゲームをして知ってる仲間たちだ。みんな笑顔で迎えてくれた。俺らGai Wu blossomsのメンバーはGai Wu Flamというラグビー経験の浅い若手選手中心のチームついて練習だ。最初に4人でランパス、SHを中心にして円を描くようにぐるぐるをランパスを続ける。息が上がる。周りの若手はケロッとしている(泣 それから3人のシェイプからヒットする練習をしてフォワードのラックでごり押ししていくAD、バックス、フォワードに分かれてラインアウト、サインプレイなどの練習が続く。途中、Blossomsのメンバーだけで集まってSHのTyronからBull、SHARKのサイン攻撃を連続する練習をして、あっという間の1時間半だった。練習の最初からとにかく「機敏に走る・低い姿勢」を意識して取り組んでみた。意外と行けるんちゃうかというのが練習を終えての自身の感想です。まぁ日曜日のBlossomsの練習で何か見えてくることを願っている。帰りにキャプテン田中と香港ローカルのちゃーちゃん店に寄った。案の定「うぅ~ん」という味だった。田中は「旨いっすね」とバクバク味のしない水っぽいカレーを頬張って食べていた 🙂

今、開幕戦を終えて

KANREKIこそ謙虚たれ!

75-10 大敗だった。約2年半の厳しい時間を我慢して迎えたシーズン開幕戦、チームとしても個人としてもとても楽しみにしていた戦いだった。なす術なく敗れた。チームとしてではなく自分として何とも後味の悪い試合になってしまった。いや、「してしまった」という表現が正しいと振り返って今、思っている。GaiWu Blossomsのメンバーとしてシーズン開幕戦のスターターとしてピッチに立たせてくれたのに何も貢献できなかった。開始早々に相手に走り切られて2本のトライを許した。その後、反撃に転じて相手陣地深くまで攻め入った左サイドのモール、ブル(SHから直接フォワードシェイプのサイン)の声を受けて走りこんだ。目の前で一瞬ボールがフワッと揺れているように感じた。伸ばした何本かの指先にボール当たってこぼれた。「ノックオン」一瞬頭が真っ白になった。攻め入って高まっていたチームの勢いが一気に消えた。背後からすぐに「チャレンジしたミスだからいいよ、いいよ」若手の声が痛かった。夏場に何度も練習してきたSHからの単純な突っ込みのプレイ、ノックオンした記憶なんかなかったのに・・なんで今、ここで!そう思った。

話は変わるが、ゴルフには「ルールはふたつしかない」という重い言い伝えがあると聞いた。どういう事かと言うと「ひとつめのルールは、あるがままにプレイせよ」だ。すべて結果を受けいれてありがままの状態でプレイせよということだ。そしてもうひとつのルールは「自分に不利になるように判断せよ」だ。二者択一の状況で誰からも見られていない。そんな状況に中で自分に不利になるような判断をしてプレイせよということだ。ゴルフは18ホールを回るのに最低でも4時間程度はかかる。否応なしに同伴競技者の癖や性格が見えてしまう。過去に一緒にラウンドした人たちの中で何人か嫌な気持ちにさせられた人が居た。嫌な気持ちが見えてしまうのだ。
ラグビーも同じだ。気持ちがプレイにしっかりと現れる。目の前にいる相手から逃げてしまうと自分の気持ちは誤魔化せない。同じイギリス発祥のスポーツだからだろうか?逃げる気持ちが見えるのだ。ハーフタイムでチームの誰かが前半の結果に暗くなりそうな気持を鼓舞するように言った。「技術じゃない気持ちだって、しっかりと気持ちで止めよう」俺はどれくらいの気持ちを持って臨んでいただろうか?恥ずかしくなった。後半、相手陣地深くまで攻め入ったときのラック、前半と同じラックからブルのサインでフォワードのシェイプ、SHからパスされたボールが目の前に飛んできた。足を出して体を前に出して手を伸ばせば届くボールだった。手が出なかった。なぜだか分からない。内藤が言った。「もっと出てよ(恐らく、もっと積極的に突っ込んでよという意味だろう)」
今シーズンは特別だ。還暦だ。春先からの練習でもそう自覚しながらやってきたつもりだった。その時から俺はずっと還暦という虚栄の上に胡坐をかいてプレイしてきたのだ。俺はすべてにおいて還暦という「言い訳」を準備してプレイしていたのだ。ピッチ立てば歳は関係ないのに。チームの中にひとつ年下の男がいる。彼は開幕戦、一度もベンチにさがることなく70分間1番のポジションを心を込めて戦いきった。ラック脇では不格好に転がりながら何度もタックルしていた。頭がさがる。「はるきさんがやるから、今年もやらなアカンでしょ」春先にそんな事を言ってくれていた。もう俺は決して歳のせいにはしないぞ。猛省だ。「還暦こそ謙虚たれ」 今、ラグビーがしたい。そう思っている。

 

詳細はこちら:Hong Kong Rugby Union

 

コーナーフラッグ目がけて走れッ

厳しかった監督の教え

一進一退の攻防が続く試合展開だった。互いに攻撃のフェーズを何度重ねてもゴール手前で粘り強いディフェンスを崩せずに得点まで結びつかずにいた。ピーンと張りつめた緊張感がピッチ全体を包む。この試合は絶対に落とせない。チーム内に自然と伝わるそんな見えない強い意志がひとりひとりの疲れ切った体を前へ前へと進めるのだ。何回目のフェーズだっただろうか?相手陣地の10メーターを少し入ったあたり、ピッチの左端に出来たラックから少し覗いているボールにスクラムハーフのタイロンスミスが手をかけて相手のディフェンスラインを確認している。疲れ切っているはずのフォワードがそれでもスタンドオフの左右に散ってシェイプを作る。僕はその右後ろについた。対面の相手ディフェンスはスタンドオフをノミネートしているようだった。スタンドオフの陰にセットした僕には気づいていないようだった。その時、タイロンスミスからボールが鋭く放たれた。デコイになるフォワードが声をかけて一斉に前にでる。一瞬、相手ディフェンスが躊躇する。対面で張っていた相手ディフェンスはスタンドの陰に位置している僕にはまだ気づいていないようだった。「タツ、右」僕がかけた小さな声に反応してスタンドのタツがふわっとボールをトスした。案の定、相手ディフェンスはスタンドオフに引き付けられて僕の目の前がパッと開けた。ディフェンスとディフェンスの間をきれいに抜けた。高校時代に厳しかった監督から教わった言葉が脳裏に蘇った。「コーナーフラッグ目がけて走れ」僕はアングルを決めて更に左に切れ込んだ。必死にコーナーフラッグを目がけて走った。太ももが重い。足が上がらない。それでもかわされた相手ディフェンスが反転して必死に追ってくるのが見えた。左からもブラインドウィングが上がってくる。ゴールラインの手前でサポートに来てくれた仲間にパスをした瞬間、僕はタックルを受けて前のめりになって崩れ落ちた。記憶が飛んだ。走っているときから全てがスローモーションのように見えた。ゆっくりと起き上がろうとするが体が言うことを聞いてくれない。コーナーフラッグの方に眼だけを動かした。薄れいく記憶の中で心地いいホイッスルが高々と吹かれて右手をまっすぐに上げているレフリーが見えた。「よかった、トライだ」。大の字に倒れたまま動けない僕の周りには誰も近づいて来てはくれない。ゆっくりと目を開ける。ギラギラと照り付ける香港の太陽がまぶしい。暑い、めっさ暑い、炎天下の気温33度超えの中のタッチゲームでの一コマでした 🙂

Memories in 2016

It’s still team mates.

Facebookで昔の思い出の写真がたまにアップされてくる。そんな中で娘ももかの本当に懐かしい写真が出てきたのでここでもアップしておこうと思います。5年前です。当時恐らく8歳だと思います。ラグビーボールに最初に触れたのは6歳くらいだったと思います。私が所属している GaiWu Blossoms(当時はGaiWu Jと言ってました)が毎年春先から夏前にかけてキッズ向けの「ラグビー教室」を開催していました。そこに夏休みを利用して日本から香港に遊びに来た時に体験したのが最初でした。その翌年、Hong Kong Football Clubへの入会をお願いしたのですが既に入会の締め切りが過ぎてて正式入会はできませんでした。それでも練習には参加していいよと言われて通い始めたのでした。そして翌年、正式に入会させてもらってチームのジャージをもらいました。背中には「MOMOKA」の名前が入っています。それでも最初はみんなの後にくっついていってボールも触れないし、パスも回って来ない日々でした。それもそのはずで英語もまともに話せない日本人がひとりチームに突然入ってきた訳ですから周りからしたらどう接していいか分からないのも当然です。子供の仲良くなるその術は大したもんです。日にちが経つにつれていつの間にか会話もできるようになりパスも回してもらえるようになりました。その時からずっと今もみんながチームメイトです 🙂

久しぶりに娘とラグビー

久しぶりに娘、ももかと一緒にラグビーの練習やってきた。土曜日のHappy Valley Sports Ground。これまでも練習を見に行くことはあったけど一緒にボールを追いかけて練習をするのはラグビーを始めた頃のミニラグビー以来だなぁ〜何年ぶりだろう。9時30分の練習開始に向けて8時30分に家をでた。昨夜の夕食時に練習来るのと聞くと遅れていくとのことだった。少し早めにホームブランドのHappy Valleyにすでに3、4人がボールに空気を入れたりタックルバックを出したりして練習の準備を始めていた。「うぃっ〜す」とみんなに声をかけて俺も支度をする。練習の前にしっかりと背中と腕、股関節から太ももの裏など伸ばしておかないとどうも不安でならない。一説では練習前のストレッチは不要だとも聞くがこれをやっておかないと安心できない。

集合時間に合わせてメンバーが集まってくる。柔軟体操のあとに体慣らしのタッチフットを始める頃になってももが歩いてくる姿が見えた。「ちゃんと来たわ」正直少し驚いた。きっと眠気にまけて来ないだろうなと思っていた。この夏休み期間は自分のチームの練習と香港ラグビーユニオン主催のラグビーサマーコースの2つ、計3つの練習に参加している。月、火、木、日曜日とラグビー漬けだ。

メンバーの中にはももが4、5歳のころからミニラグビーに一緒に参加して顔見知りのやつのいる。13歳になった姿を見て懐かしむ奴もいたりして有り難く思う。1対2や2対3のアタックディフェンスでボール出しの手伝いをしたあとタッチフットで一緒にボールを追いかけた。途中、左に展開されたボールをセンターにいたおれからウィングのももへ、パスをする瞬間にもものトイ面に誰もいないのがわかった。トライできるかも!一瞬そんなことを考えた。そんな思いを乗せたパスがももの手前でお辞儀してころがった。パスが届かなかった。無念だ。パスが通っていたらトライにつながったはずだ。ごめん、帰り道「パスが悪いよ」ももに怒られた。そんな楽しくも嬉しい久しぶりのももとの練習でした。