KANREKIこそ謙虚たれ!
75-10 大敗だった。約2年半の厳しい時間を我慢して迎えたシーズン開幕戦、チームとしても個人としてもとても楽しみにしていた戦いだった。なす術なく敗れた。チームとしてではなく自分として何とも後味の悪い試合になってしまった。いや、「してしまった」という表現が正しいと振り返って今、思っている。GaiWu Blossomsのメンバーとしてシーズン開幕戦のスターターとしてピッチに立たせてくれたのに何も貢献できなかった。開始早々に相手に走り切られて2本のトライを許した。その後、反撃に転じて相手陣地深くまで攻め入った左サイドのモール、ブル(SHから直接フォワードシェイプのサイン)の声を受けて走りこんだ。目の前で一瞬ボールがフワッと揺れているように感じた。伸ばした何本かの指先にボール当たってこぼれた。「ノックオン」一瞬頭が真っ白になった。攻め入って高まっていたチームの勢いが一気に消えた。背後からすぐに「チャレンジしたミスだからいいよ、いいよ」若手の声が痛かった。夏場に何度も練習してきたSHからの単純な突っ込みのプレイ、ノックオンした記憶なんかなかったのに・・なんで今、ここで!そう思った。
話は変わるが、ゴルフには「ルールはふたつしかない」という重い言い伝えがあると聞いた。どういう事かと言うと「ひとつめのルールは、あるがままにプレイせよ」だ。すべて結果を受けいれてありがままの状態でプレイせよということだ。そしてもうひとつのルールは「自分に不利になるように判断せよ」だ。二者択一の状況で誰からも見られていない。そんな状況に中で自分に不利になるような判断をしてプレイせよということだ。ゴルフは18ホールを回るのに最低でも4時間程度はかかる。否応なしに同伴競技者の癖や性格が見えてしまう。過去に一緒にラウンドした人たちの中で何人か嫌な気持ちにさせられた人が居た。嫌な気持ちが見えてしまうのだ。
ラグビーも同じだ。気持ちがプレイにしっかりと現れる。目の前にいる相手から逃げてしまうと自分の気持ちは誤魔化せない。同じイギリス発祥のスポーツだからだろうか?逃げる気持ちが見えるのだ。ハーフタイムでチームの誰かが前半の結果に暗くなりそうな気持を鼓舞するように言った。「技術じゃない気持ちだって、しっかりと気持ちで止めよう」俺はどれくらいの気持ちを持って臨んでいただろうか?恥ずかしくなった。後半、相手陣地深くまで攻め入ったときのラック、前半と同じラックからブルのサインでフォワードのシェイプ、SHからパスされたボールが目の前に飛んできた。足を出して体を前に出して手を伸ばせば届くボールだった。手が出なかった。なぜだか分からない。内藤が言った。「もっと出てよ(恐らく、もっと積極的に突っ込んでよという意味だろう)」
今シーズンは特別だ。還暦だ。春先からの練習でもそう自覚しながらやってきたつもりだった。その時から俺はずっと還暦という虚栄の上に胡坐をかいてプレイしてきたのだ。俺はすべてにおいて還暦という「言い訳」を準備してプレイしていたのだ。ピッチ立てば歳は関係ないのに。チームの中にひとつ年下の男がいる。彼は開幕戦、一度もベンチにさがることなく70分間1番のポジションを心を込めて戦いきった。ラック脇では不格好に転がりながら何度もタックルしていた。頭がさがる。「はるきさんがやるから、今年もやらなアカンでしょ」春先にそんな事を言ってくれていた。もう俺は決して歳のせいにはしないぞ。猛省だ。「還暦こそ謙虚たれ」 今、ラグビーがしたい。そう思っている。

2022-2023シーズンを見据えて春先に練習を開始した時、今シーズンはリーグに参加できるんだろうか?参加できたとしても試合になるんだろうか?そんな心配をしていたことを思い出した。フロントローが居ない、自分も含めて居るにはいるが戦力になりそうにないウルトラマン(3分しかもたない(笑)ばかりだった。フロントローだけじゃなくてバックロー、更にはバックスも人数自体が足りないという状況だった。それでも少しづつ日が経つにつれて居酒屋で声をかけて参加してくれたラグビー未経験の新人さんの3~4人とラグビー経験者2人の加入は心強かった。それでもチームとしての完成度は未知数でGaiWu Hong Kongメンバーとの合同チームも検討されていた。そんな状況だった。
あっ香港人のザキだ。バックスにおいては、SH:タイロン、新人の経験者のババ君、SO:タツ、なぜかヨッシー(笑、センターは剛、キャプテンの田中、ウィングにウィンガーには新人のウチノ、香港人のキット、FBは安心のドバだ。意外と今シーズン、行けそうな雰囲気です。10月8日が初戦です。こうご期待 🙂
日曜日、GaiWu Blossomsの練習は13時30分からHappy Valley Pich #5だ。少し早めに家を出て娘が練習しているFootball Clubを覗いてみた。メインピッチに男子、女子が分かれて炎天下のもとボールを追いかけている。最近は娘も練習を見られるのが嫌らしく遠くからこっそり様子をうかがうことにした。数か月ぶりにあうチームメイトたちと楽しそうだ。見つかる前にFootball clubを出てHappy Valleyに向かう。LukeがVally Fort U16のヘッドコーチを任されたと聞いていたのでそれも見に行くことにした。遠くからみてもその体形でLukeだとすぐに分かる。ニコニコしながら近づいてきていつもの低い声で「Hey Haruuu」と手を出してくる。少し話をして暫らく練習する様子を見ていた。西洋人が中心のチームだ。U16、横幅はないが身長は大人とさほど変わらない。スキルを身に着けて体重が付いてくるとすぐにラグビー選手っぽくなるはずだ。きっと数年後には香港のラグビー男女共に強くなる、僕は強くそう信じている。
一進一退の攻防が続く試合展開だった。互いに攻撃のフェーズを何度重ねてもゴール手前で粘り強いディフェンスを崩せずに得点まで結びつかずにいた。ピーンと張りつめた緊張感がピッチ全体を包む。この試合は絶対に落とせない。チーム内に自然と伝わるそんな見えない強い意志がひとりひとりの疲れ切った体を前へ前へと進めるのだ。何回目のフェーズだっただろうか?相手陣地の10メーターを少し入ったあたり、ピッチの左端に出来たラックから少し覗いているボールにスクラムハーフのタイロンスミスが手をかけて相手のディフェンスラインを確認している。疲れ切っているはずのフォワードがそれでもスタンドオフの左右に散ってシェイプを作る。僕はその右後ろについた。対面の相手ディフェンスはスタンドオフをノミネートしているようだった。スタンドオフの陰にセットした僕には気づいていないようだった。その時、タイロンスミスからボールが鋭く放たれた。デコイになるフォワードが声をかけて一斉に前にでる。一瞬、相手ディフェンスが躊躇する。対面で張っていた相手ディフェンスはスタンドの陰に位置している僕にはまだ気づいていないようだった。「タツ、右」僕がかけた小さな声に反応してスタンドのタツがふわっとボールをトスした。案の定、相手ディフェンスはスタンドオフに引き付けられて僕の目の前がパッと開けた。
大の字に倒れたまま動けない僕の周りには誰も近づいて来てはくれない。ゆっくりと目を開ける。ギラギラと照り付ける香港の太陽がまぶしい。暑い、めっさ暑い、炎天下の気温33度超えの中のタッチゲームでの一コマでした 🙂
Happy Valley pitch #1、11時30分、明け方の大雨のお陰かな?珍しく香港の空が澄み切って見える。人口芝にしかれた小さなゴムチップのひとつひとつが焼けるように熱い。スパイクの底に溶けたゴムがこびり付く。日本では考えられないだろう。澄み切った空気のおかげで容赦ない強烈な日差しが汗だくの体に照り付ける。香港の夏場のラグビーの練習は異常だ。みんなよくやってるなと我ながら感心する。2年半程度に渡って新型コロナの影響を受けた。年間を通してシーズンを完結できていなかった。今シーズン2022-2023はなんとか通常通り9月末には開幕を迎えられそうだ。
逆算すると開幕までにあと4回程度しか練習ができない計算だ。「おいおい大丈夫かぁ~」と少し心配にもなるが幸い、若くてラグビー経験のある新人が数人参加してくれている。一時国しているベテランも開幕前には戻ってくるはずだ。暑さに負けないように少しづつ気持ちを高めていこうと思っている。11月には3年ぶりに香港セブンスも開催が決まった。香港ラグビーが動き出した鼓動が聞こえる。
そして相手ディフェンスが前に出てくるタイミングを一瞬ずらすようなに首だけでフェイントをかけてから素早くオープンサイドにボールを飛ばす。ボールを受けたフライハーフが前に出る間もないくらいに相手のあがりも早い。それでもボールは自分で意思をもっているかのように第一センターと第二センターと渡ってウィンガーまではじかれた。若干フォワードパスっぽく見えたがレフリーの笛は無い。と思った瞬間、ウィンガーが伸ばした手の先を素通りしたボールが僕の前に点々と転がってきた。前のラックからほどけたフォワードが何やら大きな声で激を飛ばしながらフォローのために走り寄ってくるのが右目の端に映りこんでいるのが見えた。ボールは無常にもサイドラインに向かって不規則な転がりを続けている。何とかその手前で追いついた僕は素早くボールを拾い上げた。相手ウィンガーがすでに目の前に迫ってきた。とっさに僕は何を思ったかそのボールを蹴ってしまった。今思い返してもなぜ蹴ったのか分からない。ボールを受けた相手にオープンサイドを走り切られてトライを許してしまった。罪深きキックとみんなに揶揄された昨日の練習でのタッチゲームでの一幕でした 🙂
ブルーズが少しづつブランビーズのゴールへとボールを運んでいく。ラックを作ってはバックスに少し展開しては前に進む。両チームともに反則ができない緊張感が画面からも伝わってくる。我慢できなくなったブランビーズがゴール正面でラックの中でペナルティ、アドバンテージをもらったブルーズはゴール正面に遠目にスタンバッていたボーデンがドロップゴールを決めて19ー21で試合終了ぉ〜小説でも書けないような結末でした。やっぱスーパーラグビーですね。こんな試合をみているとついつい自分も出来そうな気がしてくるんです。試合中にドロップゴールを決めてみたいんです。きっとやったら怒られるだろうなぁとおもいつづドロップキックの練習を毎週頑張っているんです 🙂
今夜、ホームの Happy Valley Sports Ground で、Gai Wu Rugby football clubのシーズン決起集会が開催されました。例年、レストランを借りて開催していた催しですがコロナの影響もあってグランドでの開催となりました。Gai Wu team全体の会長、昨年に引き続いてANDYのスピーチのあと昨シーズンの優秀選手や最優秀成長選手の表彰などが行われました。
我らが GaiWu blossom(日本人チーム)は帰任者と新規加入者がうまく入れ替わって新生Blossomsとしてシーズンを迎えます。催しのあとは香港チームと一緒にタッチゲームで汗を流しました。休憩中に聞いたらお父さんは私よりも3つも年下でした(><) 20代、30代が中心の香港チームと一緒に楕円のボールを追いかけて楽しい時間でした。こんなにいい時間を与えてくれるラグビーに改めて心から感謝したいと思いました。
最近の香港は雨季シーズンでどんよりとした曇り&小雨の天気が続いている。毎年3月末頃から気温が上がるのに合わせて日本で言うところの梅雨が始まってシトシト小雨が不快感を増大させる時期だ。今年はその始まりが少し遅くなったような気がする。4月後半から始まったそれが今、ピークになりつつあるようです。今日もそんなどんよりとした曇り空のもと仲間と一緒に楽しくタッチ中心の練習でした。最初のランパスでめげてしまった。たった3往復のランパスが異常にきつく感じた。きっと空気中の湿度のせいで胸いっぱいの空気が取り入れられないせいだと外部環境のせいにしてしまう(><)
トライ1本のビハインドだった。自陣、22mの内側の右端付近でマイボールのラック、ハーフのヨッシースミスが見えているボールに手をかけて首を左右に振って相手ディフェンスの陣形を確認している。左オープンにアタックラインをひいてフライハーフが両手を胸の前に構えている。試合終了間際で5分も残っていないことは僕の頭の中にあった。同時に自陣22mの手前、残り時間を考えると相手に大切なボールをみすみす渡してしまうキックという選択はない、チームの意識は統一されているはずだ。
僕は顔を右側に振って、同時に腕も右に振った。でもボールは投げずにダミーで相手のウィンガーを抜き去った。瞬間、目の前が一気に開けた。すぐ右後ろからヨッシー・スミスの声がした。短くパスをして同点のトライ・・・振り返ると相手のウィンガーが立ち止まって肩をすくめて僕をこっちを見ていた。最高のダミーパスが決まった瞬間だった。