思いを乗せて
子供の時に嗅いだことのある雑草をちぎった時の匂いだ
跪いて前傾した右側の肩甲骨あたりに大きな圧を感じる
息が苦しい 身動きができない
重いはずだ 汗臭い大柄の人間たちが何人も重なってのし掛かっている
それでも必死に股の間に手を伸ばしてボールをキープする
ゴール前のラック
グランドに頬をつけた姿勢から見える雑草の小さな葉の緑が鮮やかだ
そうこの日の試合はここ天然芝のグランドだ
わずかな隙間からスクラムハーフがボールに手をかけているのが見えた
瞬きすると手とボールは消えていた
背中から少しづつ圧が抜けていく
と同時に固めていた体から力が抜けて「ふぅっ」と息を吐けた
痺れた手で地面を押しながら体を起こす
ボールは遥かサイドライン側まで運ばれていた
良かったつながった
行けぇ〜ッ
心の中で叫んだ